賃貸経営で実現する「収益を得ながら相続税対策」のうまみ

賃貸経営で実現する「収益を得ながら相続税対策」のうまみ

企業経営者にとって相続税の負担は無視できない経営課題です。特に、金融資産を多く保有している場合、相続時に高額な税金が課されるおそれがあります。相続税問題はもはや他人事ではなく、積極的な対策が求められる時代です。

そうした中で、経営者の間で注目を集めているのが、賃貸不動産を活用した相続税対策です。今回は、最適な賃貸経営のメリットと具体的な資産承継戦略を解説します。

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不動産が節税に効果的な理由~資産評価の仕組みを知る

相続税は資産の評価額に応じて課されますが、金融資産と不動産では評価方法が大きく異なります。

金融資産はそのまま額面どおりに評価されるため、課税対象額が非常に高くなります。一方、不動産は財産評価基本通達に基づいて評価され、実際の市場価格(実勢価格)の約70~80%という低い水準で算出されます。

同じ価値の資産でも、不動産として保有することで、評価額を大幅に圧縮し、結果として相続税負担を大きく軽減できます。

また、賃貸経営に活用する土地(貸家建付地)はさらに評価額が引き下げられます。借地権割合70%と借家権割合30%が控除されるためです。これらを考慮すると、土地評価額は21%圧縮されます。

さらに、「小規模宅地等の特例」を活用すると、200㎡までの土地の評価額を50%減額することが可能です。

建物の評価も相続税対策において有利です。建物の相続税評価額は新築時の価格の約60%程度で計算され、賃貸物件の場合は借家権割合(30%)が評価から控除されるため、評価額が大幅に低下します。

つまり、金融資産を不動産に組み替えること自体が節税になるのです。

安定収益とインフレ耐性~賃貸経営の二重のメリット

賃貸経営の大きな魅力は、節税だけでなく安定した収益を得られることです。

株式投資のように価格変動の激しい投資とは異なり、賃貸経営は入居者がいる限り毎月安定的な収入を得られます。

ローンを活用して物件を取得した場合でも、家賃収入がローン返済に充てられ、ローン完済後は管理費などを除き、純利益が手元に残ります。これにより、経営者の引退後も安定した収入源として機能し、老後資金の形成にも役立ちます。

また、賃貸経営はインフレに対して強い耐性があります。インフレによる物価上昇は、不動産価格や家賃相場の上昇を促す傾向があります。

固定金利型のローンを利用している場合、インフレにより実質的な負債額が減少します。

さらに、入居率の安定性にも注目すべきです。断熱性能や耐震性などの基本性能に加えて、配管のアクセス性を高めることで将来のリノベーション費用を抑える構造設計を行えば、物件の長寿命化と入居率の安定化に直結します。

税務上「賃貸割合」は入居率に左右されるため、入居率が高ければ高いほど節税効果も継続されやすくなります。

賃貸経営成功の秘訣~立地選定からリスク管理まで

賃貸経営で成功を収めるには、適切な立地選定が欠かせません。駅から近く、生活利便性が高い地域を選ぶことが基本です。

ファミリー層向けなら学校や公園、スーパーなどが近隣にあり、単身者向けなら交通利便性や飲食店の充実した地域が望まれます。

設備面でも、エアコン、室内洗濯機置場、TVモニター付きインターホンなどの基本設備を整えることが重要です。

さらに、インターネット無料や宅配ボックスといった付加価値設備を導入すれば、競合物件との差別化を図れます。また、定期的なリノベーションにより物件の魅力を維持し、長期的な入居率向上を図ることも大切です。

賃貸経営には空室リスクが伴いますが、適切な家賃設定と信頼できる管理会社との連携により、そのリスクを軽減できます。

管理会社選定にあたっては、地域に精通し、迅速かつ丁寧な対応力を持ち、マーケティング能力が高い業者を選ぶことが成功への近道です。

また、物件の取得前には長期の収支シミュレーションを行い、空室率や金利上昇、修繕費の増加、賃料下落といったさまざまなリスクを事前に把握し、対応策を講じておくことが求められます。

特に借入金による投資では、期待利回りが低下した場合に時価評価がローン残高を下回る「逆ザヤ」リスクも存在します。転売価値や出口戦略を含めた視点で、事業性を検討することが不可欠です。

高度な相続対策としての法人化と出口戦略

個人所有の賃貸不動産を法人所有へ移行する「法人化」は、相続税対策として極めて有効な手段です。法人を設立し、建物部分を法人に譲渡すること「法人化」が実現します。

法人が受け取った家賃を役員報酬として親族に支払えば、所得を分散させることができ、税率を下げることができます。

また、法人化により、資産の一部を法人に隔離することで、相続財産の増加を抑えつつ柔軟な資金管理が実現します。

現実的な納税準備と専門家との連携

相続税の納税は現金で行う必要があるため、資産の多くが不動産で構成されている場合、納税資金の確保が課題となります。

そのため、あらかじめ生命保険を活用し、納税資金を準備しておく方法が有効です。

また、小規模宅地特例の適用面積を最大限活かすように土地を区画分けしておくことで、評価額の低減と納税資金の確保を両立できます。

このように、賃貸経営は単なる節税手法ではなく、資産の組み換えから承継、管理、出口戦略、納税準備に至るまでを網羅する「包括的な資産承継戦略」として活用することが求められています。

経営者としての視点を活かし、専門家と連携しながら多角的な視野で戦略を組み立てることで、次世代に確実な資産を引き継ぐための礎を築くことができるのです。
(著者 公認会計士/税理士 岸田康雄)

まとめ

今回は、賃貸経営で実現する「収益を得ながら相続税対策」について解説しました。

弊社では、生前に行う相続対策サポートを行っています。
生前から相続税のシミュレーションを行っておくことで、余裕をもったプランニングを行うことができ、次の世代に安心して財産を残すことができます。

初回のご相談・お見積りは無料です。弊社の経験豊富な税理士が親身に対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

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賃貸経営による相続税対策に関するよくある質問

財産目録とは何ですか?
財産目録とは、相続する財産を一覧にしたものです。必ず作成しなければならないものではありませんが、次の場合は作成しなければなりません。
①遺産分割調停
②遺言執行者が選任された場合
※遺言執行者とは遺言書があり、その遺言通りに相続を実行する人物のことをいいます。
財産目録に記載する相続財産にはどのようなものがありますか?
財産目録を作成する前には、相続財産がどの程度あるのかを調べなければなりません。
相続財産には「財産」と「負債」の2種類が存在し、どちらも財産目録に記載する必要があります。「財産」とは、預貯金や動産、有価証券・不動産などの資産を指します。
一方の「負債」は、債務(借入金)や税金・その他などです。
預貯金はどのように調べればよいですか?
相続においてもっともありうる相続財産が預貯金です。預貯金に関しては、銀行預金にどのくらい残高があるかを知る必要があります。
預貯金額が詳細にわからないと、財産目録を作成できません。
◆銀行の預金口座を確認
本人以外はどこの銀行で口座をつくっているかは意外と知らないものです。まずは遺品整理を行い、通帳やキャッシュカードを見つけてください。また、パソコンなどのメールなどをチェックし、ネット銀行の取引を探してください。
不動産はどのように調べればよいですか?
被相続人が所有していた土地・建物といった不動産すべて洗い出すことから始めます。
所有していた不動産が確認できたら、土地・建物ごとに定められた評価方法によって評価額を算定し、不動産評価額を財産目録に記載します。
有価証券(株式・投資信託等)はどのように調べればよいですか?
株式や投資信託などの有価証券も財産目録に記載する必要があります。有価証券は何をどれくらい被相続人が所有していたかの確認が必要です。確認できたら証券会社や信託銀行に残高証明書を発行してもらい、それぞれの評価方法に基づく評価額を算出します。
自動車・バイクはどのように調べればよいですか?
自動車やバイクも財産目録に記載する必要があります。確認すべき事項はその動産が被相続人の名義であるかどうかです。そのため車検証などを確認し、所有者を確認してください。なお評価額は、買取査定業者に査定してもらった査定額が評価額となります。
負債はどのように調べればよいですか?
負債も財産目録に記載しますので、故人が抱えていた負債、借金をすべて確認しなければなりません。郵便物などから金融機関などを突き止め、被相続人が死亡した旨を伝えて、残高証明書を発行してもらいます。
確認する方法としては、被相続人が所有していたカード類や請求書・督促状などの書類を調べるとよいでしょう。

今回記載した内容は下記の相続通信7月号に掲載しております。