複数の株主によって会社が経営されている場合、株主同士の利害対立によって経営が混乱することを避けるため、株主間契約を締結します。
今回はその契約内容を説明します。
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株主間契約が必要な4つのケース
株主間契約とは、会社の複数の株主同士が、会社運営や株式譲渡など関するルールを定めた契
約をいいます。
このように複数の株主によるルールを設けることが必要となる場面として、非上場会社の相続、合弁会社の設立、第三者割当増資による資本参加、株式の一部売却の4つが考えられます。
非上場会社の相続とは、遺産分割の結果として、非上場会社の株式が複数の相続人に分散して取得されることです。亡くなった父親が株式100%を所有していたとしても、長男と次男が平等に遺産分割すれば、長男が50%、次男が50%の株式を所有する会社となります。
株主同士で仲が良ければいいですが、仲が悪ければ、役員の選任、株式譲渡などの場面で利害関係が対立することがないよう、株主間契約でルールを定めておくことが必要となります。
また、合弁会社の設立とは、複数の出資者が各自お金を出して共同で事業を行う会社を設立することです。出資比率や役員の選任、株式譲渡などの場面で利害関係が対立することがないよう、株主間契約でルールを定めておくことが必要となります。
さらに、第三者割当増資による資本参加とは、会社設立後、第三者が新たに株式を取得することです。そのような場合、新しい株主と既存株主との間において、役員の選任、株式譲渡などの場面において利害関係が対立することがないよう、株主間契約でルールを定めておくことが必要となります。
そして、株式の一部売却とは、会社設立後に株式の一部を売却することです。
この結果として複数の株主が存在することとなり、既存株主と新しい株主との間において、役員の選任、株式譲渡などの場面において利害関係が対立することがないよう、株主間契約でルールを定めておくことが必要となります。
資本提携のメリット
株主が親族ではない3つのケースは、一般的に「資本提携」と呼ばれます。他人同士で資金を出し合って提携関係を結ぶということです。
資本提携のメリットは、事業に失敗したときの損失負担を抑えることができる点にあります。
もちろん、事業が大成功となってもその利益を独り占めすることはできません。
また、複数の株主が経営することによるシナジー効果を享受することができます。
シナジー効果とは、複数の企業がお互いに協力して事業活動に取り組み、単独での活動以上に成果を生むことです。これは2つ以上の企業がお互いに作用し合うことによる相乗効果と言えます。
このように資本提携を行いますと、複数の株主が、お互いに協力しようと考えるため、企業価
値の増大をもたらします。
株主間契約に規定すべき条項
株主間契約に規定すべき条項として、ガバナンスに関する事項、事業に関する事項、株式の譲渡に関する事項、関係の解消に関する事項があります。
ガバナンスに関する事項として、少数株主であっても役員の選任できるようにする条項、少数株主であっても一定の重要事項の拒否権を持つ条項を設けるケースがあります。
例えば、定款、取締役会規程等の改廃、株式、新株予約権等の発行、重要なM&A、株式の取得・処分、重要な財産の取得・処分、剰余金の配当、事業計画・年間予算の承認、重要な契約の締結、新規事業の開始、既存事業の廃止、高額な借り入れ、社債の発行、債務保証などがあります。
事業に関する事項として、会社と株主との間の取引内容と条件、知的財産権のライセンス契約、従業員の派遣、追加出資義務の有無などの資金調達、配当方針、競業禁止義務や従業員勧誘禁止義務などがあります。
株式の譲渡に関する事項として、株式の譲渡制限があります。株主自身が会社にとって重要な経営資源となっていることが多いことから、相手方の同意がない限り、株式譲渡を禁止するケースが多く見られます。しかし、それでは株主の投資回収の機会が無くなってしまうことから、例外として、先買権、共同売却請求権、強制売却請求権の3つを認めることとします。
その一方、株主間で株式を譲渡するケースも想定されます。その場合に備えて、株主間での株式譲渡に係るコール・オプションやプット・オプションも規定されます。
コール・オプションとは、経営に重大な影響を与えるような出来事がおきた場合、相手方の株式の全部または一部を買い取ることができる権利をいいます。
これに対して、プット・オプションとは、経営に重大な影響を与えるような出来事がおきた場合、相手方に対して株式の全部または一部を売り付けることができる権利をいいます。
これらの権利の行使によって強制的に売買が行われるため、大株主のみがコール・オプションを持ち、少数株主のみがプット・オプションを持つケースが多く見られます。
関係の解消に関する事項として、拒否権の行使に伴うデッドロックへの対応方法があります。重要事項の決定に際して少数株主に拒否権を設けるケースが多いものの、それが行使された場合には、会社としての意思決定ができずに会社運営が滞ってしまいます。
その場合、株主間での株式譲渡、会社の解散・清算が規定されます。株主間での株式譲渡については、コール・オプションまたはプット・オプションが規定されますが、その際の譲渡価格も規定されます。また、会社の解散・清算を選択する場合には、残された事業をどちらの株主に譲渡するか、会社の残余財産をどのように分配するかが規定されます。
(公認会計士/税理士 岸田康雄著『相続生前対策パーフェクトガイド』『富裕層のための相続税対策と資産運用」より日本ビズアップが編集』)
まとめ
今回は、株主間契約について解説しました。
株主間契約の締結が必要となる場面はさまざまで、契約書に規定すべき条項も異なります。
何を規定すべきかという判断ができないという方は、弊社にご相談ください。初回のご相談・お見積りは無料です。弊社の経験豊富な税理士が親身に対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。
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株主契約書に関するよくある質問
- 株主間契約書とはなんですか?
- 複数の株主によって会社が経営されている場合、株主同士の利害対立によって経営が混乱することを避けるため、株主間契約を締結します。締結時に用いられるものが「株主間契約書」です。
- 株主間契約はいつ必要ですか?
- 「株主間契約」が必要となる場面として、非上場会社の相続、合弁会社の設立、第三者割当増資による資本参加、株式の一部売却の4つが考えられます。
今回記載した内容は下記の相続通信8月号に掲載しております。