法人契約の生命保険の活用法

法人契約の生命保険の活用法

中小企業の経営者の多くが、自社の経営だけでなく、自身の相続や事業承継に頭を悩ませています。特に、自社株承継や納税資金、家族間の遺産分割といった相続リスクは、早めに手を打たなければ深刻な問題を招きかねません。

今回は、こうした課題に対して「法人契約の生命保険」を用いることで、スマートかつ確実に対策できる方法をわかりやすく解説します。

\専門性高く幅広いニーズに素早く対応!初回無料相談はこちらから/

経営者の人生に潜む「3つの壁」とは?

中小企業の経営者にとって、人生における三大リスクは明確です。それは、①若くして突然亡くなること、②老後資金が不足すること、③相続時に混乱が生じることです。

この3つはどれもタイミングや内容が異なるものの、共通して「事前準備で避けられるリスク」である点が重要です。

まず、若くして突然亡くなってしまった場合、法人の借入金の連帯保証債務が遺族に降りかかることがあり、会社の存続にも大きな影響を与えます。これに対しては、法人契約の定期保険に加入し、死亡保障でカバーするのが効果的です。10年更新型の定期保険でも十分であり、解約返戻金は必ずしも必要とされないという点が、保険選びのポイントです。

次に、老後資金の準備が必要となります。

現役引退後も悠々自適な生活を送るには、趣味や旅行、医療や介護といった支出も含め、十分な資金が必要です。この対策として有効なのが「長期平準定期保険」です。法人契約とすることで、保険料を損金算入しつつ、解約返戻金を退職金の原資とすることができます。

最後に、相続時に混乱が生じてしまうことです。自社株という換金性のない資産が大きな経営者の相続では、現金が足りず納税が困難となるケースも少なくありません。このときに有効なのが「終身保険」です。死亡保険金を後継者が受け取ることで、他の相続人への代償金支払いにも充てられ、円滑な相続が実現します。

終身保険の活用で実現するスムーズな事業承継

経営者の多くが見落としがちなのが、生命保険を「貯蓄」として見る視点です。終身保険は「元本保証でありながら、死亡時には確実に現金が入ってくる商品」として、資産承継に大きな役割を果たします。

法人契約で加入した終身保険は、将来、社長の退職時に個人へ名義変更することで、退職所得として受け取ることも可能です。

この場合、退職所得控除や2分の1課税といった優遇税制が適用されるため、実質的な税負担も軽くなります。

名義変更後に相続が発生した場合、死亡保険金は「みなし相続財産」として、相続税の非課税枠が適用されます。

相続人が4人いれば、500万円 × 4人=2,000万円まで非課税となり、代償分割や納税資金に活用することが可能です。

また、生命保険を用いた相続対策は、自社株の買取資金や事業承継時の納税資金確保の手段としても優れています。特に、相続税評価額の高い非上場株式を持つ経営者にとっては、死亡保険金がその手段となります。

後継者以外の子どもには「現金」で公平な分割を

中小企業の事業承継では、後継者となる子どもに自社株や事業用資産を集中して引き継がせる必要があるため、遺産分割のバランスが大きな課題となります。自社株は、評価額が高くなりやすく、後継者と他の相続人との間で不公平感が生じやすい資産です。こうした不均衡を解消し、争族を未然に防ぐための有効な手段が「生命保険による現金の準備」です。

具体的には、法人契約で加入した終身保険を活用し、後継者から後継者以外の子どもへ代償金として支払うようにしておくことで、相続発生時に現金が遺されるように設計します。

これにより、価値ある自社株を相続できない他の子どもにも、目に見える形で公平感を持たせることができます。

このように、生命保険は遺産分割のバランス調整機能において非常に優れており、家族関係を円満に保つための「思いやりの備え」と言えるでしょう。

法人保険による資産移転と節税の最適解決法

経営者が法人から個人へ資産を移転する手段は複数ありますが、主に「退職金」「自己株買い」「借入金返済」「有償譲渡」が検討されます。

この中でも、生命保険を活用した方法は、キャッシュフローと税負担のバランスに優れています。

たとえば、法人が支払った保険料の一部を費用計上し、一定年数後に解約返戻金が戻る仕組みを使えば、法人税の課税を繰延べながら、将来的な退職金原資を準備することが可能です。

解約返戻率が100%を下回る商品がほとんどですが、それでもなお効果的に活用することができます。

また、終身保険であれば、死亡保険金の受取り時に相続税の非課税枠が適用されるため、相続税負担を軽減させることができます。

また、自社株を法人が買い取る「自己株買い」や、事業用不動産(底地)を法人が現金で買い取る「底地買取り」といった方法も、生命保険を活用して資金を準備することで、スムーズに実行可能となります。

これらの手法は、相続人間での不動産や自社株の分割協議が難航した場合の「最後の切り札」として、非常に現実的です。

法人契約の生命保険は複雑な税務が絡むため、導入にあたっては信頼できる専門家のサポートが欠かせません。しかし、的確に設計された保険商品は、経営者の人生における不安を劇的に軽減する力を持っています。
(著者 公認会計士/税理士 岸田康雄)

まとめ

今回は、法人契約の生命保険の活用法について解説しました。

弊社では、生前に行う相続対策サポートを行っています。
生前から相続税のシミュレーションを行っておくことで、余裕をもったプランニングを行うことができ、次の世代に安心して財産を残すことができます。

初回のご相談・お見積りは無料です。弊社の経験豊富な税理士が親身に対応いたしますので、お気軽にお問い合わせください。

\専門性高く幅広いニーズに素早く対応!初回無料相談はこちらから/

法人契約の生命保険に関するよくある質問

非課税財産とは何ですか?
相続人が取得した財産のなかには、相続税がかからないものがあります。これを非課税財産といいます。たとえば、墓地や仏壇、国に寄付した財産などです。また、死亡保険金や死亡退職金は、みなし相続財産として相続財産に加算しますが、相続人に加算する場合には、ともに一定額までが非課税となります。
死亡保険金・死亡退職金の非課税限度額はどのくらいですか?
相続人が受け取った生命保険金や死亡退職金のうち、500万円かける「法定相続人の数」で計算される金額までは非課税となります。これを非課税限度額といいます。ただし、これは相続人全員に対する非課税限度額の合計額です。複数の相続人が死亡保険金を受け取っていた場合、非課税限度額を、その保険金の金額によって按分しなければいけません。
注意点がいくつかあります。一つは、相続人以外の人が死亡保険金を受け取っても非課税にならないことです。もう一つは、相続放棄した人でも、受取人であれば死亡保険金を受けとることができますが、非課税とならないことです。そして、ここでの計算に使う「法定相続人の数」は、民法の場合と数え方が異なっているので、それも注意が必要です。
ここでの非課税限度額の計算では、「法定相続人の数」を使用します。これは、相続放棄があった場合は、それが無かったものとして数えた相続人の数をいいます。つまり、「法定相続人の数」には、実際に相続放棄した人の数も含めるのです。
また、相続人に養子が含まれる場合、「法定相続人の数」に含めることができる養子の数は、被相続人に実子がある場合は1人、被相続人に実子がない場合は2人に制限されています。
また、弔慰金・花輪代・葬祭料も一定金額まで非課税となります。その限度額は、業務上の死亡であるとき、死亡時の普通給与の3年分、業務外の死亡であるとき、死亡時の普通給与の6カ月分です。
その他の非課税財産にはどのようなものがありますか?
墓地、墓石、仏壇、仏具には相続税がかかりません。お葬式で香典を受け取っても、相続税がかからないことは当然ですが、贈与税や所得税もかかりません。
債務控除と葬式費用について教えてください
被相続人が残した借金などの債務を承継した場合には、相続税を計算するときに、その金額を資産の合計額から控除できます。
これを債務控除といいます。たとえば、銀行借入金、事業用の金銭債務、未払いの医療費や税金などです。ただし、ローンで購入していた墓地や仏壇などの未払金は、非課税財産に対する債務であるため、控除できません。
また、葬式費用も同様に控除できます。控除できるものは、お通夜、告別式、お布施、火葬、納骨などの費用です。香典返しや初七日の法要などの費用は控除できません。
結局のところ、資産合計から債務と葬式費用を控除した正味の遺産に対して相続税がかかると考えましょう。この正味の遺産のことを課税価格といいます。

今回記載した内容は下記の相続通信6月号に掲載しております。